その他2

□まだ来ぬ訪れ
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※現パロっぽい。
※最近の寒さに、つい書いてしまったもの。

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「やっぱ冬はこたつだよなぁ」

「ぬくぬくしてます」

「ねむくなるー」

「二人とも、そこで寝たら風邪引くよ」


まさに至福…といった緩んだ表情でだらだらとテーブルの板に頬をつけてぼやく2人に、一人こたつの外に出て動いていたジュードが仕方ないなぁ。とでも言いたげに苦笑した。
そして忠告に生返事を返す2人の輪に加わる。
布を捲り足を入れれば、じわりと膝から伝わる熱。
確かにこの温もりは癖になる。と思いながら、ジュードもほっと一息ついた。


「あの…今日はジュードのお家にお泊りしてもいいですか?」

「こたつから出たくないから賛成ー」


おずおずと伺うように上目遣いで尋ねてきたエリーゼに、ティポが跳ねるようにこたつから飛び出しくるくると回る。
その対照的な動作を見たジュードは困惑したように眉尻を下げた。


「えーと。それはちょっと」

「……何でですか」


不服そうに頬を膨らませるエリーゼにジュードは気まずそうに苦笑し、手持ち無沙汰のようにテーブルの上に置いた両手の指を絡ませた。


「さすがに、一人暮らしの男の部屋に泊まるのはドロッセルさんが反対すると思うよ?」

「ジュードなら安心して任せられるって、この前ドロッセルが言ってました!だから大丈夫です」


案の定、何故か自信満々に胸を張り反論してきたエリーゼにジュードは分かりやすく俯き肩を落とした。


「…それはそれで落ち込むんだけど…」

「相変わらず男として見られてねぇな青少年」

「アルヴィンうるさい」


テーブルに懐いたまま嬉々として横槍を入れてきたアルヴィンを、顔を上げることなく一蹴する。
そして、説得のためにか再び顔を上げ言葉を考えるように視線を宙に彷徨わせるジュードの迷いを勘違いしたのか、エリーゼが更に語気を強めた。


「だったら、今ドロッセルに聞いてみます!それで、泊まってもいい。って言われたらお泊りしてもいいですか?」


まるで、何かに挑むようなそれでいて何処か不安さも感じる…そんな視線で訴えられ、ジュードは狼狽えつつも最終的には諦めからかため息をついた後に了承した。


「…わかったよ。ドロッセルさんが僕の部屋に外泊してもいいって言ったらね」

「本当ですか!?」

「ジュード大好き!」


勝算があるのか、ティポと顔を見合せ喜びあうとすぐさまドロッセルに連絡を取るためか部屋から颯爽と出ていった一人と一匹の後ろ姿を、ジュードは疲れた表情で見送った。
何処か哀愁すら感じる少年のその姿にアルヴィンは喉を震わせるように笑う。


「…押し負けたな」

「アルヴィンうるさい」

「そうやって甘いからつけ込まれるんだぜ?」

「……アルヴィン」


八つ当たりも多分に含まれているのか、対応がいつもにも増して冷たいジュードにアルヴィンは笑いを堪えるように肩を竦ませると素直に口を閉ざした。
その後訪れる沈黙に最初はどちらも身動きせず落ち着いていたが、次第にジュードがちらちらと落ち着きなく扉へと視線を向けるようになり、そのあからさまな反応にアルヴィンは口元に笑みを刻みながら黙って見ていた。
そして、少年を中心にどことなくそわそわとした空気が漂い始めた頃、前触れもなく開かれた扉の音にジュードはびくりと肩を跳ねさせた。
そんなジュードの反応を物ともせず騒がしい気配も一緒に引きつれてきた少女と一匹が、飛び込むようにして部屋の中へと戻ってきた。


「ジュード!ドロッセルがいいって言いました!」

「やったー」

「え!?嘘!?本当に!?」


駆け込んできた勢いのままにこたつの側に立ち止まり半ば興奮しながら報告するエリーゼの言葉を、ジュードは目を見開きながら半ば呆然とした表情で聞いていた。
その間抜けな顔にアルヴィンは頬杖をついたまま、ぼやく。


「だから諦めろって」

「でも…」


一度は諦めはしたが、やはりどこか断られることを期待していたのか渋るジュードに始めは喜色満面だったエリーゼの表情がだんだんと意気消沈し、最終的には機嫌を損ねたように半眼になった。
そして視線を落とすと胸の前で手を握り締める。


「…どうしてジュードは反対するんですか?旅の時も、たまに一緒に寝てたじゃないですか」


微かな不満を訴えるように見下ろしてくる少女と責めるような目をした一匹に、ジュードは気まずさからか視線を逸らした。


「……宿と家は違うよ」

「でも密室に二人きりでした」

「往生際が悪いぞー!」


密室って…。と絶句するジュードにやはり何処か楽しそうに目を細めたアルヴィンがあえて空気を読まず茶化すように追撃する。


「男らしくないぞ優等生」

「アルヴィンは黙ってて!」


男の言葉に過剰に反応し睨み付けてくる少年を肩を竦めることで往なすと、再度黙るアルヴィン。
ジュードもまた再びエリーゼへと向き直ると真剣な眼差しを向けた。


「あのね、エリー「それとも…」


遮るようにぽつりと小さく呟かれた声は言葉を止めるには十分な力があったらしい。
出端を挫かれたジュードの目の前で、俯いたエリーゼの心情に呼応するようにティポもうなだれている。
唇を震わせたエリーゼは一度言葉を飲み込むような仕草を見せた後、口を開いた。


「それとも…ジュードは嫌なんですか?」


その意味に含まれているのは、部屋に誰かを泊めるのを嫌がっている事にか、それともエリーゼ自身に向けられているのか。多分両方だろうと推察したジュードは、虚を衝かれたような表情のあと困ったように頬を掻いた。






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