その他

□2012・V.D記念
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※レイユリレイ。
※上下リバっぽいことをそれとなく匂わせてます。
苦手な方は注意して下さい。

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「ねぇ…、こういう時って普通だったらユーリが作るものなんじゃない?」

「何だおっさん、俺の作ったパフェが食いたかったのか?それなら早く言えよ」

「いやいや。そういうことじゃなくてね」


然程広くはない空間に満遍なく漂う甘い香りにげんなりしつつそう突っ込めば、始終幸せそうな顔で視線すらパフェから離さなかったユーリが始めて顔を上げた。


「バレンタインだからだろ?でも、別におっさんが作ったって問題ねぇだろ。俺達、男同士なんだし」


どっちがあげるとか貰うとか無意味だろ。そう口にして首を傾げるユーリに、レイヴンは反論も出来ずに口籠もる。

確かにそうなんだけどさぁ…ほら、


「…えー…役割的な?」


夜のごにょごにょの時の…とか?

視線を泳がせつつそう呟くと、あからさまに眉を顰められた。

そもそも、バレンタインのこの日にチョコを貰うのならまだしも、あげるのは自分の柄じゃない。とレイヴンは内心ぼやく。
もっとも、目の前で今度はこちらの顔を穴が開くんじゃないかってくらい凝視したままスプーンを容器から口へ往復させているユーリは、相手が女だろうが男だろうが気にしないで渡しそうなイメージがあるけど。
むしろ彼の場合は、自分チョコだけは必ず毎年作っていそうな気がする。
気がする…ではなく、絶対作ってる。


「役割…ねぇ。それこそ差別じゃねぇ?どっちが突っ込んでるかって話なら俺とおっさんの場合、突っ込みつつ突っ込ま「ぎゃーっぎゃーっ!」」


なんてことを言い出すのだこの青年はっ!
いくらこの場に二人きりだとしてもだ!
言っていい内容とそうでない内容があるでしょ!
…むしろ、自分が恥ずかしくて聞きたくない。
言葉を途中で遮ったのが不満だったのか、ユーリの表情が更に不機嫌そうになった。


「…おっさん、うるせぇぞ」

「青年は、お願いだからオブラートを包む配慮を見せて!」


今度こそ完全に手を止めたユーリは肘をつき、持ち上げたスプーンの先を行儀悪く揺らし始めた。


「…あのな。俺だってさすがに、けつのあなとかぺ「ユーリさぁぁんっ!?さっきより悪化してますけどっ!?」」


綺麗な顔して中身は男前なこの青年は、どうして微妙な年頃のおっさんの恥じらいを分かってくれないのだ。
何だか泣きそうな気分で反射的にユーリの口元を手で覆い強制的に言葉を遮れば、最初はもごもごと抵抗していた口元も次第に大人しくはなる。
…が、代わりにこちらを見上げる目が半眼になっていった。
このままだと、何だか仕事人的なものを発動されそうな雰囲気だったのでさっさと手を離すと、気持ちを切り替えるかのように一度目を閉じたユーリが呆れたような長い溜息をついた。
…こちらのほうが溜息をつきたい気分だ。


「おっさんはなにが不満なんだ?」

「え?」

「…違うな。不安なのか?」


不満?不安?
どちらも身に覚えがないのだが…。
見上げる眼差しの強さに気圧されたのか思わず押し黙れば、ユーリは仕方ないとでも言いたげに苦笑した。


「もっと簡単にするか?俺のチョコが欲しかったのか、それとも別の何かが欲しかったのか」


柔らかに笑うユーリにレイヴンは虚を突かれたように瞬きを繰り返した。
ユーリのチョコが欲しい…わけではない。もちろん別の何かでもない…はずである。





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