その他

□2012・V.D記念
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※現パロっぽい。同級生?

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「晋ちゃん、あーん!」

「…は?……っぐ」


盛大な音と共に開かれた扉。
それと同時に聞こえた耳慣れた叫び声に、高杉が反射的に振り向き疑問符と共に口を開ければ小さな何かがものすごい勢いで喉奥目がけて投げ込まれた。
喉に当たったそれは、そのまま奥に入ることなく跳ね返り、舌の上に乗ったようだ。
かろうじて吐き出さなかったそれを閉じた口で確認するも、やはりむせてしまい若干涙目になりながら高杉は再び扉へと振り向いた。


「…っは…、っおま…何しやが…っ」

「今日は、はっぴーばれんたいんですよー。銀さんのアイをありがたくうけとりやがれこのヤロー」


そこには、予想通り…しかし何故か仁王立ちした銀時が扉の前に立っていた。
外気に晒されていたせいか、頬と耳が少し赤く色づいている。
その様子からも外の寒さが窺えるのに、何故か銀時はそれ以上部屋へと入ろうとはせず扉を背に立ったままだ。
今更、気遣うような間柄でもないのだから遠慮している訳ではないだろう。
それに対して特に何も言わず
ただ、外から一緒に連れてきた冷気が寒い。と思いながら高杉は、バレンタイン?と先程の言葉を思い出していた。
そして、舌で溶け出した甘味が何かを確認したところで銀時の声音が低かったことにも気付く。
まるで、何かに怒っているかのような雰囲気に、身に覚えのない高杉は内心首を傾げた。


「銀時…、何を怒ってるんだ?」

「べぇつにぃ?怒ってなんかねぇよ」

「銀時」

「…だから怒ってねぇって」

「銀時」

「……」


まるで拗ねたように口を閉ざした銀時に、埒が開かないと実力行使に出ようと腰を上げかけた瞬間、チッと舌打ちが落とされた。
バツが悪そうに歪められた表情に、高杉の表情もまた怪訝そうに歪められる。


「…ぎ…」

「っ高杉のばーかばーか!」


腰を上げるために床に手をついたところで、身を反転した銀時によって再び盛大な音と共に扉が閉じられた。
やはり、扉が開いた瞬間に侵入してきた冷気が寒い。
ばたばたと走り去る音を聞きながらしばらく唖然として見送っていた高杉は、再び甦った静寂が支配する空間で今更な疑問を口にした。


「…あいつ、何しに来たんだ?」


銀時がここに来てからしたことといえば、扉を開けたと同時に高杉の口の中にチョコらしきものを投げ込み、八つ当たりのように叫んだあと再び扉を乱暴に閉めて帰っていっただけだ。
その一連の行動に何か意味があったのか。
それに、外が寒かったにしては何だか顔全体がほんのり色付いていた気が…しないでもない?
…と、そこまで考えたところで嵐のように過ぎていったあれこれを再び思い返した高杉は、一つの結論にたどり着いた。


「……バカはあいつだろ」


銀時は、はっきりとバレンタインと口に出していたではないか。
頬が紅潮していたのも、寒さではなく照れからのものだろう。
きっと、普通に渡すのが恥ずかしくて何日も前から無駄にぐるぐると考えていたに違いない。
そして、ろくにいい考えも思いつかないまま当日になってしまい、テンパった上での先程の行動なのだとしたら
高杉の口元が自然と緩む。
多分、ここは銀時を追い掛けるフラグなんだろう。
でも、あちらは高杉が追い掛けてくるとは少しも期待していないに違いない。
外も寒そうだし。
だったら、もう少し経って頭が冷えた時に、さっきのやりとりを思い出して恥ずかしさに悶えている姿を眺めているほうが楽しそうだ、とその時の情景を想像し高杉は声に出して笑った。







end








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