その他

□ゆらめく余情
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※ちょっとだけ注意。
※15禁程度の温い表現有り。

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いつまで経っても
この瞬間は好きになれない




陽が真上に到達してまだ間もない時間帯。
帰り支度…と言っても、壁に立てかけていた剣を取るだけなのだが…別段珍しい所作でもないその後ろ姿をフレンは複雑な気持ちで見守っていた。

頭ではわかっているのだ。
彼も、何かと忙しい時間を割いて来てくれている。
自分とて決して暇な訳ではない。
むしろ、背後の机に積み上げられて山となっている書類がそれらを雄弁に物語っている。
しかし、そんな現状を把握しているからといって気持ちも伴うかと言えば別問題だ。

ではどうすればいいのか

自分達は、そこまで聞き分けのない子供ではない。
故に、取れる選択肢は一つしかない訳で
だからこその板挟みな感情に、フレンは黙って向けられている背中を見つめていた。
そんなフレンの視線にユーリは気付く様子すらない。
だが、彼の性格を考えると気付いていてもあえて無視している可能性もある。
…が、そんな事をわかったからといって現状が変化する訳ではない。
ユーリはいつも通りに剣を手に取ると、振り返る事なくその足を真っ直ぐ窓際へと向けた。
出入口はそこじゃないと何回言えば理解してくれるんだろうかと考えつつ、口から出る筈だった当初予定していた言葉は
しかし、全く別の言葉となって気付いたら親友の背中へとかけられていた。


「……もう帰るのか?」

「…ん?これでも忙しいんでな」


我ながら未練がましいなと思う台詞に、剣を右手に持ち窓際へと足を進めていたユーリは一瞬驚いたように少しだけ振り向いた。
その反応に我に返ったフレンが、すかさず訂正すべく口を開きかけるが何を思ったのかユーリはニヤリと何かを企むような笑みを浮かべたかと思うと、窓際で静かに足を止めた。
思わず戸惑うフレンに、ユーリは踵を返し来た道を戻ってくる。


「何だ。淋しいのか?」


それに応えられる言葉が見つからず立ち尽くすフレンのすぐ目の前で、足を止めたユーリはわざとらしく首を傾げた。

彼を足止めしたかったのかと聞かれれば、答えは否だ。
しかし発した言葉は、それとは相反する彼をこの場に留めるもの。
では、何故あんな台詞を言ってしまったのか。

その答えがわからず俯き黙るフレンに、ユーリは左手をそっと目の前の頬へと伸ばした。


「どうした?」


ふれん。と語尾が擦れ甘く囁くように呼ばれた名前にフレンは更に狼狽える。
その反応にユーリは満足気に笑んだ。
細い指先が撫でるように頬の上を往復し、そのまま顎へと滑らせるとくすぐるように動く。
首筋の動脈をなぞるように爪先で辿られて、ぴくりと頬が引きつった。
揺らぐ感情。

……だが、ダメだ。

そんなフレンの葛藤を余所に、戯れるように肌を撫でているユーリの笑みは、更に深くなる。


「…フレン?」


だめ押しのようにもう一度耳元で名前を囁かれて、フレンは観念したように下げていた視線を持ち上げた。


「……そうだと言ったら?」


その意外に素直な反応にびっくりしたのか、ユーリは目を見開くと指の動きを止めた。

最初に図らずも仕掛けてしまったのはこちらだ。
これ以上は止めるべきなのも解っている。

……でも

一気に覆った感情に従い、フレンは目の前の肩を掴むと距離をつめた。
腰へと手を回し引き寄せる事で、相手が離れようとする動きを制する。
戸惑いからか口を開きかけるユーリの、その唇から音が紡がれるのを塞ぐ事で遮った。


「んぅっ…!?」


柔い唇が触れた瞬間、押し退けるように肩に置かれていた手が反応するが、戯れるように唇を啄み開いた隙間から舌を差し込むと、途端に抵抗が少なくなる。
どうやら甘受したらしい事を悟ったフレンは、更に角度を変えると咥内へ深く舌を入れた。
上顎を擽り、何処か甘い唇と舌を蹂躙する。
お互いの息が乱れ始めた所で漸く唇を解放した。
唾液が糸を引いて離れる唇をフレンは名残惜しげに見送る。



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