その他

□子供の主張
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※親子バレ後。

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もし


いつか叶うのなら










「…クラトス!」


前方に見えた姿が振り向く前に、駆ける勢いを殺さないまま躊躇うことなく広い背中へと飛びつく。
かなりの勢いで飛びついたにも関わらず少しも揺らがない体に、ほんのちょっとの嫉妬を織り交ぜつつ紺のマントに頬を擦りよせ脇から腕を前に回すとしっかりと抱きついた。
"抱きしめた"とならないのは、彼との体格差に問題がある為だ。
こればかりは今すぐどうにか出来る事でもないので、抱きつく形でも良しとする。
もっとも、抱きつく事も抱きしめる事と同じ位に嬉しいので俺としては問題ない。
少し前までは絶対に後ろだけは取らせてくれなかったのに、今はこんなにも簡単に取らせてくれる事がとても嬉しい。
だって、まるで俺は特別だと言われているみたいではないか。
訝しげに呼ばれた名が、背中にぴたりと密着させた耳と反対の耳から二重になって聞こえてくる。
彼に呼ばれると、その三文字が何やら特別な響きを持った言葉のように聞こえてくるから不思議だ。
些か困惑気に問いかけてくる声にも答えず、黙って背中に抱きつく。
ぎゅうぎゅうと出来る限りの力で抱きしめてみるが、彼はちっとも苦しくないらしい。
逆に心配そうな声音で彼の腹の上辺りに回した腕の上から手を添えられた。
彼が呼吸する度に腹部の筋肉の動きが腕に伝わる。
振り向きかける頭を拒むように、項の辺りに額を埋めた。

彼とは未だかなりの差がある体格と背丈。
今はまだ少年の域を出ていないが、近い将来成長期を経て青年へと変化したら
その時は、俺が彼を腕の中に包み込むように抱きしめてやりたい。
だから今は、子供の特権を生かしたくさん彼に抱きついてやるのだ。




『でもやっぱり、早く大人になりたいな』





end





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ロイクラと断言出来るのは始めてかもしれない。

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