その他

□とある昼下がり
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※ED後捏造。二人とも帰還してます。

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「……何をしている」

「…ん?あ。アッシュ、おはよー!」


たまたま厨房の前を通りかかり、扉が開け放たれた室内を覗けばそこには見慣れた頭と背中。
思わず立ち止まったが、このまま何事もなかったかのように立ち去るのもどうかと思って声をかければ、背中を向けて何やら作業していたらしいルークは満面の笑みで振り向いた。
その顔の鼻の先には白い粉。
麺棒を片手に手を振るのを見るに、どうやら何かを作っていたようだ。
声をかけてしまった手前、このまま立ち去るのを躊躇ったアッシュは仕方なく厨房へと足を踏み入れる。


「……で?」

「何か最近料理に目覚めてさ。料理長に頼んで少しの間場所を貸して貰ったんだ」


再び背中を向けて作業を再開する手元を背後から覗き込んでみれば、何やら生地を伸ばしている最中らしく鼻歌混じりで手を前後に動かしている。
そういえば、今までルークの作った料理を食べた事がなかったな。と思い作業の様子がよく見える横へと場所を移動しながら呟いた。


「…食えるのか?」

「失礼なっ!そりゃぁ…ここで出る料理みたいに美味しくはないかもしれないけど、…っでも!少なくともナタリアの作る料理に比べれば食べられるものが作れるっつーの!」


麺棒を片手に力説するルークに、うっかりそう遠くない過去に初めて目にした幼なじみの料理を思い出してアッシュは青ざめた。
邪気のない満面の笑みでもって差し出された皿の上にあった理解不能な料理モドキ…を見た時は、本気でリアクションに困ってしまった。
そして、思考とともに体も固まったのをいいことに、幼なじみの手によって口の中に無理矢理放りこまれたその物体の様々な感触を思い出しアッシュは思わず口元を押さえる。
…とにかく、アレに比べれば本人曰く食べられるらしいが、そもそも比較対象が悪いのではないか。

……いやいや。

ナタリアの料理だって、食べる当人の気持ちの持ちよう次第では、食べられる……筈。
色々と犠牲にする覚悟で挑めば……多分。


「……で、何を作ってるんだ」


頭に蘇る悲惨なそれらを記憶からかき消すように続きを促せば、ルークは再び手を止め腰に手を当てると粉のついた鼻頭を擦った。


「クッキー」


こいつらは簡単そうに見えて意外と奥が深いんだぜ?と何故か得意気に胸を張るルークに、お前はクッキーの何を知っている。と突っ込みかけたがやめたおいた。
そしてクッキーのレシピを思い出しながら、まぁルークの言ったように余程変な材料を加えないかぎりは普通に食べられるものが出来るだろう、と納得する。
その間に生地を伸ばし終わったのか、今度は台の横に置いてあった袋の中から何やら金属質のものを台の上にばらばらと取り出した。


「アッシュも型抜きやるか?」


俺、クッキー作りでこれが一番楽しみなんだよなぁ実は。なんて、まるで子供のように喜んでいる姿を横目にアッシュは出された抜き型の一つを手に取った。
顔の正面まで持ち上げ眺めてみるが何の形をしているのか分からず、他の手に取っていない型へも視線を落とし観察してみるが、定番の形以外でいくつか分からない形があった。
適当な形を作ったにしては意味があるように法則性のある整った形をしている気がして、色んな角度から検証してみる。
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