その他

□忘却
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※親子。
ロイクラ前提だけど、相変わらずCP色薄め。
ちょっとシリアスかも。

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目を塞いでみる。




文字通り"視界を"だ。


自らの手で、閉じた目蓋の上から更に覆い隠す。


真っ暗な闇。

当前だ。

光源を感じる唯一の"視界"を塞いでいるのだから。


だから、何も見える筈はない。


そう

何も"見える"筈はないのだ。



もし"見えた"としたら

それは幻覚であり

過去の膨大な記憶に埋もれた残像。

要は脳が見せている一種のまやかし。

そこから派生する

補完された想い出と言う名の虚構。

または夢想。






それでも


もし叶うのなら


いにしえの"亡霊"ではなく


現つの"記録"として


あの光景を


再びこの"視界"に甦らせたい



そしてこの暗闇の中に救いの光を請う





「クラトス」


残像が散る。

暗闇が乱れる。

乱雑に差し込む光。


「何してるんだ?」


"視界"を開く。

次いで、塞いでいたものを取り去った。



闇から光が溢れる。


遠い記憶の中で

愛しい彼女と血を分けた子供


「…………ロイド」

「ん?」


それらが数多の中に埋もれてしまったように

これもまたいつか"記憶"となって膨大な刻の中に積み重なっていくのだろう。

そして、いつしか幻となり

亡霊となりやがて消滅する




だが


もし


叶うのなら






「…眩しいな」

「?今日は天気いいからな」


窓と青年とを交互に見てから不思議そうに首を傾げる少年に、初めて窓の外へ視線を移す。

遮るもののない"視界"に映る空。








そうだ



これは"記憶"ではなく



ましてや"幻覚"でもない





私の"視界"もまだ鬱がれていない





END



+++++++++

ちょっと、昔書いてた作風になりました。
気分転換に書いたのなので短めです。

4千年の記憶って、想像するよりきっと膨大だよね。
そして、古い記憶から順に詳細が曖昧になってきて、曖昧な部分を脳が勝手に補い出したら、同じ記憶でも三人に誤差が生じたりする事も出てくるんじゃないかなぁ。って思って。
それとも、その辺も天使故に記憶の処理能力がすごかったりするのかな?

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