その他

□機械仕掛け
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。第四段。
『特殊設定』

※前回はユリレイ寄りでしたが、今回はレイユリ寄り。

※特殊設定は、心臓魔導器。

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それに気付いたのは偶然だった。

それ位に些細な仕草で、微かな違和感。

でも、その違和感を異変だと確信するだけの情報がなかったから、気にするだけに留めておいたのだが




一定の距離を保ちながら歩いていた速度を、徐々に緩めると集団の最後尾へと下がる。
そして、数歩後ろからばれない程度に観察していたが、やはり何処か調子が悪いように見えた。


だから



「なぁ、今日はここで宿を取らねぇか?」



陽が丁度真上にあるお昼時。
何かの催し事か祭りでもあるのか、いつも以上に大通りに出店が立ち並び人で賑わっている街中。
ユーリが足を止めて声をかけると、少し前方を歩いていた面々もそれぞれ足を止めて振り向いた。


「ユーリ、どうしたんです?」


移動途中に立ち寄ったこの街での用事は既に済んでいたので、本来であれば更に別の地点に赴き素材を集めた後、近くの街で宿を取る予定だったのだが、突然のユーリの提案にエステルは不思議そうに首を傾げた。


「まだ、頼まれてた素材採りに行ってないよ?」


先頭のほうから戸惑い気味に告げるカロルに対し、珍しく言葉に迷ったユーリが何と言おうかと意味もなく口を開きかけると、その様子に何かを感じ取ったのかジュディスとフレンが先に口を挟んできた。


「そうね。でも、そんなに急いでいる用事ではないし。カロル達にとっても、今日はここで宿を取ったほうがいいのではないかしら?」

「僕も、この街に寄ったついでに少し騎士団に顔を出したいから、そのほうが助かるかな」


まるで、助け船を出すかのような二人のその言葉をユーリは、口を薄く開いたままの状態で唖然として聞いていたが、街に入った時から目に入る賑やかさに何やらそわそわとしていたカロルとエステルの瞳が、途端に輝き出した。


「…そ…そうなの?うーん…ユーリとフレンに用事があるなら仕方ないよね!」


今日はこの町の宿に泊まろう!と、言葉とは裏腹に腰に手をあて嬉しそうに宣言したカロルに、パティはすかさず賛成の意で手を上げた。
リタだけは、予定が変わる事に対し不服そうに抗議していたが、エステルに街中の観光を誘われると、いつものように照れて頬を染めつつ何だかんだと言い訳していたが最終的には押し負けて頷いている。
その様子を離れた所から眺めていたユーリは、同じように少し距離を置いた場所に佇み目配せしてきたフレンとジュディスに、苦笑と共に声を出さずに礼を言った。
残ったレイヴンはというと、珍しい事にぼんやりとしていたらしく、この町での宿泊が決定されてから漸く事態を把握出来たのか、最初に提案してきたユーリに怪訝な表情を向けたが、ユーリはそれを綺麗に無視するとレイヴンに近寄り腕を強引に掴んだ。


「そういう事で、夜まで一端解散な。カロルとエステルとパティ、はしゃぎすぎるなよ」

「大丈夫よ。私も一緒について行くから」


すでに街中の出店へと意識が向いている子供達の耳には、ユーリの形ばかりの注意の言葉は全く聞こえていないらしい。
代わりに、引率を名乗り出たジュディスが返事を返した。


「ラピード。僕と一緒に来るかい?」


そして、さっきから一声も鳴かずに何か言いたげにユーリの足下から見上げていたラピードは、もう一人の飼い主の言葉に返事をしたのか、ユーリへと声をかけたのか
一声だけ鳴くとゆっくりとユーリから離れ、やがてフレンと共に出口の方へと歩いていった。
そして、とうとう我慢しきれずに駆け出して行った子供達の塊の一番後ろ。
背中越しにひらひらと振られるジュディスの手に、彼女からは見えないと分かりつつ手を振り返すと、ユーリはその場に残されたレイヴンを伴って反対の方角へと足を向けた。







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