その他

□天の使い
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。第四段。
『特殊設定』

※書き始めは、ほのぼの路線だった筈が何故かシリアスになってました。あれ?
また定番ネタです。
やっぱりCP色薄め。
余所様のお宅と展開が被ってない事を祈ります。

※特殊設定は、天使と羽。

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すごく不釣り合いだと思った


でも、すごく似合うとも思った




背中から生えた青い透き通った羽。
淡い光を放ちながらふわふわと揺らめいている光景は、まるで天使が降臨しているかのようで。
俺はその神秘的な光景に、ただただ見惚れていた。













俺の周りには、何人か“羽”を持っている人がいる。

コレットのは色がピンク色の所為か、柔らかそうで触ったらふわふわしてそうだし、ゼロスの金色の羽は硬そうだけどとても温かそうだ。
でもクラトスの青い羽は、触れると冷たそうだし硬いのと同時に脆そうな印象を受ける。
ただ、色だけなら彼にはとても似合っていると思った。
それに実際は、温かいとか冷たいなんて感じないのだとコレットが前言っていた気がする。
感覚もないみたいだけど、触れられるとくすぐったい感じが少しするんだとか。
後日、同じ事をゼロスにも聞いてみたら、やっぱり冷温は感じないけれどコレットとは違って、背筋を何かが登ってくるような悪寒に近いものを感じるとか言っていた気がする。
もしかしたら、個人差があるのかもしれない。
だとしたら、クラトスの羽にも二人とは違う感覚があるのだろうか。と、疑問が浮かんだ。
もっとも、俺がただクラトスの羽に触ってみたいというのもあるけれど。

だから、たまたま宿の二人部屋で同室になった時に思い切って聞いてみた。


「…なぁ。羽、出してくれないか?」

「………何?」


部屋に入るなり手荷物を適当に近くのベッドの上へ放ると、椅子を引き寄せ行儀悪く背もたれに顎を乗せるような形で座る。
そして、少し離れたベッドの付近で荷物の整理をしていたクラトスの背中に声をかけると案の定、怪訝な顔で振り向かれたので、俺は何て言えばいいのか暫し悩んだ。


「いや……、別に変な意味はないんだけど…その……クラトスの羽に触ってみたいなって思ってさ…」

「……私の羽にか?」

「そう。アンタの羽に」


言葉を選びながら頷いた俺に、クラトスは少し目を細め意図を探るような視線を向けてきたが、そのまま視線を逸らさないで見つめていると、諦めたのか溜め息を一つつき、ベッドへ腰掛けるとゆっくりと目蓋を下ろした。
すると、薄暗かった部屋の中に異質な淡い光が彼の背中から漏れだし、青い羽がまるで羽化するように広がっていく。
ふわりふわりと風もないのに揺れ、完全に広がったのと同時にクラトスの瞳が開いた。
視線を合わせたまま無言で促されたので、俺は立ち上がりゆっくりと近づくと、クラトスの正面に立った。


「え…と…。…触ってもいいのか?」

「…あぁ」


顔を僅かに伏せるのを見届け、手を伸ばすと薄い光を放つ羽にそっと触れる。
感触があるようなないような不思議な感覚。
暫く恐る恐る触った後に、近くにある一枚の羽を付け根から先端へと指を滑らせてみた。
途端、クラトスの肩が小さく反応する。


「ご…ごめん!痛かったか!?」

「いや…大丈夫だ」


反射的に手を離し慌てて顔を覗きこむと、クラトスは目を伏せ眉も寄せながら、何かに耐えるかのような表情を浮かべていた。
やっぱり神経が通ってるのだろうか。
もっとも、マナに感覚があるのかは分からないが。


「実は…この前、コレットと話してた時の事なんだけど、コレットは羽に触られるとくすぐったいって言うんだよ。で、同じ事を後でゼロスにも聞いたら、ゼロスは悪寒を感じるって言うからさ。なら、アンタはどうなのかな?って思ったから触ってみたんだけど…」

「…そうか」


今更ながら拙い言葉で理由を説明すると、クラトスは何を思ったのか、ふっと小さく笑った。
その動作に羽の光も心なしか揺れる。


「あー…、確か…ユアンとミトスにも羽があるよな。あいつらは何か言ってなかったか?」


何故か顔を直視出来なくて若干視線を逸らしながら聞いてみると、クラトスは2、3回瞬きをして考える素振りをした後、首を振った。


「……さぁな。私も今まで気にした事すらなかった」

「そうなのか?」


うーん。

俺なら気になるけどなぁ。

ましてや、クラトスの場合はコレットやゼロス達と違って、多分…いや間違いなく、まだ周りに同じような状態の仲間がほとんどいなかったような早い段階で羽が生えたんだろうし。


「…で、どうなんだ?くすぐったいとか」

「……いや」

「それなら…痛いとか?」

「………いや」

「じゃぁ、何も感じないのか?」

「…僅かにしか感覚はない」


だから、その“僅か”の感覚が何なのか知りたいんだけど。
それでも痛くはないらしいので、再び目の前の羽に手を伸ばす。
力を入れれば折れたりするのだろうか?
その割には、指で摘んでいる感触すらしないから、それ以前の問題なのかもしれない。


「あ。もしかして、触られるの…嫌だったか?」


これも今更だが、眉尻を下げて顔を覗くとクラトスは、きょとんとした珍しい表情を浮かべた後


「…そうだな。だが…お前になら、構わない」


そう言って淡く光る羽を背に、ふわりと微笑む彼は本当に天使みたいだと思った。






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