その他

□君待ち
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。第二段。
『窓の外を眺める』

アシュルクだけどアッシュはほとんど出ません。
そういう意味では、ルーク+ミュウかもしれない。

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とある宿屋の中の廊下で、仲間達と一度解散したルークは部屋に入るなり、手に持っていた荷物をベッドに放り投げるようにして置くと、そのまま窓際へと駆け寄り硝子にぺたりと両手をつけ顔を近付けた。


「すっげー!」


今日の宿は、街の中でも少し高台になっている所に建っている所為か、窓からは街全体が一望出来、少し遠く離れた所には海も見えるとても景色の眺めがいい所だった。

天高く何処までも広がる薄い青。
地平線の水面が太陽に反射してきらきらと眩しく光り、その手前の街中には整備された建物が綺麗に立ち並ぶ。
その間の道を、米粒程に小さくなった人々が不規則に動いている。
暫し、その景色に見惚れて惚けていると、すっかり忘れていたソレが肩の上で跳ねた。


「ご主人様、海が光って綺麗ですの!」


そう言って器用に肩の上で跳ね続けるミュウを、ルークは苦笑しつつも窓枠へと下ろしてやる。
そして、再び窓硝子に手をつくと窓の施錠を外し、外側へゆっくりと開放した。
ふわりと春風が部屋の中へと吹き抜ける。
その春独特の匂いと、微かに混じる塩の香に、ルークは瞳を眇ると笑みを浮かべた。

確かアニスが、今日はバザーをやっていると言っていた。
その所為か、道を歩く人々の姿が前に此処を訪れてきた時よりも多い気がする。
さっきから興奮してるのか絶えず跳ねているミュウに、落ちるなよ。とだけ忠告すると、上半身を少し屈めて両肘をつき街を見下ろした。

仕事中なのか忙しなく通る人。
親子でゆっくりと歩いてる人。
店の前に立つ客引きの人。
店先で商品を眺めている人。
それらをぼーっとしながら見つめていると、何故か頭の中に彼の姿が浮かんできて知らず溜め息が漏れた。


『アッシュ今頃何処にいるんだろなぁ』


同じ空の下にいるとはいえ、世界は広い。
お互いに意識して会おうとしなければ、偶然以外に目当ての人と会う事なんて不可能だろう。
そう考えると、たまにニアミスするのは運がいいほうなのかもしれない。
けれど、それもここ最近は全くといっていい程なかったりする。
彼もそうだが、自分達も決して暇な訳ではない。
まして今は、世界を駆けずり回っている理由が理由なので訪れる場所も色んな意味で多岐に渡り、それ故に偶然出会う確率がかなり低くなっていても仕方のない状況。
だからこその定期連絡なのだが、それもついこの前一方通行で貰ったばかりなので、あちらに何か不測の事態でもない限りは暫く繋げてくる事はないだろう。
声を聞く限りは元気そうだったが、やはり姿を見て確認がしたいなと思ってしまう。
彼にしてみれば、そんな事を思われるだけでも不快だろうが。


『会いたいなぁ』


アッシュの事だから、無事なのは分かっているけれど

それでも…と思ってしまう。


『何で俺にはアッシュの居場所がわかんねーのかな?』


『そんなの…とっくに分かってる。だって、俺は……』


またいつもの癖で、仲間達曰く卑屈に考えてしまうのを、首を振る事で思考を霧散させた。
香る春風に目蓋を閉じる。


飛んでいければいい。

そう

例えば

翼なんかがあればいい。

そしたら

アッシュの事だって上空から探せるし、いつだって飛んで会いに行けるのに。



「…飛べればなぁ」


「みゅ?ご主人様?どこかに行きたいんですの?」


ミュウなら少し飛べるですの!

うっかり口から出てしまったルークの言葉を聞いたミュウが、隣で必死に耳をパタパタと動かしアピールしてくる。
その様子にルークは苦笑すると、その小さな頭をぽんぽん叩いてやった。
そして、再び向けた窓の外。
何気なく視線を向けた街角に見覚えのある色が見えた気がして、ルークは目を見開くと思わず窓の外へ上半身を乗り出した。
ミュウが不思議そうに、ご主人様?と首を傾げている。
その間も何処か一点を凝視していたルークは、驚いた顔から一変、次第に口元を綻ばせると、やや乱暴に窓を閉め施錠をし始めた。
そんな主人の行動を、隣で不思議そうにミュウが見つめていると、行くぞミュウ!という言葉と共に小さな体が浮く。
鷲掴みする勢いでミュウを掴んだルークは、ばたばたと忙しなく部屋を横切り、待ち望んだ゛偶然゛へと駆けるべく扉を開け飛び出していった。



END



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これも定番の話で。
やっぱ、旅の最中で甘々は書きづらい…。

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