その他

□遥遠
1ページ/1ページ


※同じシチュエーションでテイルズ3作。第二段。
『窓の外を眺める』

CP色薄めです。
多分、親子バレ後。
若干、暗め?
もしかしたら、後で隔離部屋へ移動するかも。

++++++++++++








特にこれといって用事はなかったのだけれど
ふと、クラトスの姿が見当たらない事に気付いたロイドは、自分もまたこれといって用事がなかった為、何となく宿の中を捜索し始めた。
凡そ、居場所に見当は付いていたけれど、これまた何となく散歩がてら色々と歩き回り、最後にたどり着いた宿の一室。
予想通り、目当ての人はいた。
いたのだが…その人がいる部屋の中は何だか声をかけずらい雰囲気で、何となく困ってしまったロイドは、暫し扉の前で立ち尽くした。

クラトスはベッドに座って窓の外を見ていた。
腕を両脇に無造作に垂らし、まるで一点を見つめているかのようにブレない視線。
その眼差しは一見、空を見つめているようだけど


『多分、違うんだろうな』


漠然とそんな事を思いながら、ロイドは知らず眉間に皺を刻んだ。

窓が閉まっている部屋の中は、かすかに鳥の囀りが聞こえる他は、ロイドの後ろに見える廊下から聞こえる宿屋にいる客の声や物音だけ。
気配に聡い彼なら、ロイドが扉を開けた事で存在に気付いている筈なのに、クラトスはこちらを一瞥すらせず、ただ静かに窓の外へと視線を向けている。
窓の外というより、むしろ…何処か遠くのほうを見ているような気がするが、あながち間違いでもないのだろう。
黙認されたのか無視されているのか分からないが、一向に振り向きもせず言葉すら発しないクラトスに、ロイドはむっと口をへの字に曲げると、軋む扉を些か乱暴に音をたてて閉じ、わざと靴音を響かせてずかずかと部屋へと侵入した。
そして、適当に脱いだブーツを床に落とすと、軋む音をたててベッドへと上がり、座るクラトスの背中と背中をくっつけるようにして腰を下ろした。
その拗ねた気配に、クラトスが漸く少しだけ反応して振り向く。


「…どうした?」


「…………。」


「ロイド…?」


いつもなら、物音をたてているとはいえ無言で近寄るなんて行為…ましてや、その背後を取るなんていつもの彼ならさせないだろうし、自分もしないのだが


『…何か………分かんねーけど…』


とにかく悔しくて、体を小さく縮こませるように足を曲げ胸元に引き寄せると、膝の上に顎を乗せ目の前の薄汚れた壁を睨み付けた。
クラトスは、それ以上答える気配のないロイドの様子に訝しげに首を傾げたが、やがて諦めたように小さく息を吐くと、再び窓の外へ視線を戻した。
静寂が訪れる。
けれどもそれは、先程のような拒む気配ではない事を感じて、ロイドは無意識に詰めていた息を吐き出した。

クラトスは、変わらず窓の外をぼんやりと眺めている。
この角度じゃ、きっと空の青しか見えないだろうに。
今日は雲一つない晴天だったから、尚更わざわざ窓から空を見ても面白いものなんて見えないだろうに。


『それとも、クラトスには……』


俺には見えない、何かが見えているんだろうか…?


ロイドは一心に睨み付けていた壁から視線を外し、握っていた手に力をこめると大きく息を吐き出し、遮断するように目蓋を閉じるとゆっくりと後ろに体重をかけた。
そのかかる重みに、クラトスは再び窓から視線を外すと、目線だけ後ろへ流し瞬きをするが再び窓の外へと視線を戻した。
背中から肩が触れ、最後に頭まで完全に寄りかかる。
お互いの呼吸のたびに、僅かに上下するのを背中に感じながら、暫くそのまま呼吸を繰り返した。
微かに聞こえる鳥の囀りを聞きながら、ロイドも窓の外へ視線を移す。


狭い窓枠から見えた空は、いつもと変わらない蒼一色だった。





end


++++++++

これも書いておかなきゃ的な定番話。
どうしても親子は暗くなる。
次こそは明るい話にしたい。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ