その他
□二大欲
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。第二段。
『窓の外を眺める』
※リバっぽい表現有。
というか、レイユリとユリレイ。
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「…おっさん、腹減った」
「…何よ青年。さっき昼食食べたばかりじゃない」
とある宿屋の一室。
部屋割りで同室になった二人は、日頃の疲れを癒す為に各々休憩を取っていた…筈だった。
「クレープ食いたい」
ぼそりと、力のないくぐもった声で呟かれた言葉。
顔には出ていなかったが、やはりここ最近の強行軍で疲れが溜まっていたのか、部屋に入るなり近くのベッドへ倒れこむようにして寝転がってからずっと静かだったユーリのその唐突な言葉に、同じく疲れからか窓際のベッドに座り何をするでもなく、ぼけっと窓の外の空を眺めていたレイヴンは、視線を空へ向けたままおざなりに応えた。
「自分で作りなさいよ」
「パフェでもいいや」
求められた問いに対し、律儀に答えてあげたのにこの仕打ち。
レイヴンは、少々ウンザリとした顔で答えた。
「だから、自分で作りなさいって」
「ケーキかプリンでもいいや」
「……ねぇ、おっさんの話聞いてる?」
半ば面倒臭くなって仕方なく振り向くが、ユーリは相変わらずベッドの上でこちらに背を向け、最後に見た姿勢のまま変わらずに転がっている。
もしかして今までの全部独り言?
そんな疑惑が浮かび、若干の気まずさと多大な面倒臭さで窓の外へ再び視線を流すが
「砂糖をくれ」
「どんだけ甘味不足!?」
次いで耳に入ってきた言葉に、レイヴンは思わず振り向いて突っ込みを入れた。
しかし、その言葉が合図だったのか
ユーリはひどく緩慢な動きで横たえていた身を起こすと、体を支えていないほうの手で前髪を無造作に掻き上げレイヴンへと視線を向けた。
「なぁ、おっさん」
「…………何よ」
長い髪の隙間から覗く何処か艶っぽい…しかも何かを求めるかのような熱っぽいユーリのその眼差しに、レイヴンは片頬をぴくりと引きつらせた。
ものすごく嫌な予感しかしなくて、レイヴンは先手必勝とばかりにユーリが口を開く前に牽制した。
「言っとくけど…おっさんが甘いもの嫌いなのは知ってるでしょ?食べたければ自分で作りなさいよ」
こっちだって疲れてるのに、よりによって甘い物を作るなんて冗談じゃない。ここはきっぱりと言ってやらねば!と意気込んで跳ね退けたのだが、返ってきた返答は予想外のものだった。
「じゃぁ、おっさん食べる」
「今の流れでどうしてそうなるの!?」
もしかすると、ユーリは自分が思っている以上に、かなりお疲れなのかもしれない。そんな事を思いながら、レイヴンは若干遠い目になった。
が、ユーリはそんなレイヴンを余所に、酷くダルそうな動きでのそのそとベッドの端へと四つん這いで移動し始める。
「むしろ、おっさんが食べたくなってきた」
そう言って動き出したユーリのその行動と、何処となく漂い始めた怪しい空気に、レイヴンは狼狽えて必至に首を振った。
「いやいや、ちょっと待ってユーリ君!そう!クレープよね!?今すぐ作るから!」
跳ね起きるようにして立ち上がり、ユーリのいるベッドを避けるように迂回して部屋を出ていこうと横切った瞬間、それまでの緩慢な動きが嘘のような瞬発力でもってユーリが伸ばした腕により羽織の端を捕まれたレイヴンは、前線で戦う戦士の腕力でもってベッドへと放り投げられた。
「痛っ…!?何するのよ青ね……」
ベッドのスプリングで体が僅かに跳ね、一瞬息が詰まった後何かが体の上に覆い被さってきた気配に、レイヴンが慌てて見上げた先のユーリは、実に魅惑的は笑顔。
この体勢は何デスか!?
冷や汗を流しつつも、視線の先にある薄く開いた唇から覗く赤い舌や、はだけた服装から見える白い胸元に、思わず見惚れてしまったのも束の間。
ユーリはまるで猫のように目を細めると、顔の横に垂れている髪を背中へと流しながら、珍しい無邪気な笑顔でもって笑んだ。
「…つー訳で。いただきます」
「…………え゛。ちょっ!?まさか本気で…っ!?」
その後、夕食の為に部屋から姿を現したユーリの、まるで鼻歌でも歌い出しそうな程の常にないご機嫌な様子に、たまたま廊下で鉢合わせたエステルは不思議そうに少し首を傾げてその背中を見送っていた。
end
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ユリレイに見せ掛けたレイユリです。
レイユリです。
ユーリは受け身でも、若い分おっさんよりは体力ありそうなイメージ。
逆に、おっさんのが体力あってもいいけど。
要は、ユリレイでもレイユリでも構わないという事です。