その他

□不変
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。『寝起き』


最後は下町コンビ。
ユーリを、も少し男らしくしたかった。


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ふと目を開けると、視界いっぱいに幼なじみの寝顔が映った。
状況が飲み込めず、シーツに片頬を埋めたまま、寝起きのぼんやりとした意識で暫し瞬きを繰り返す。
そして、若干狭い視界の中で視線を横へずらすと、ゆっくりと周囲へ彷徨わせた。
天井と壁の一部しか見えない上に薄暗くてはっきりとは分からないが、多分此処は帝都の城にある幼なじみの私室で間違いないだろう。

確か、昨日は所用で下町へ寄ったついでに、久しく顔を見せていなかった幼なじみへ激励しようとふと思い立ち、単身城へ乗り込んだ。
そして目的通り幼なじみと会い、二人で近況報告がてら談笑している内に、気付けば酒に手を伸ばしてて…それから…それから?
辿っていた記憶が、ある時点から一向に続かない事に気付き思わず顔を顰める。


『マジかよ…記憶がねぇ』


長居するつもりはなかった。
にも関わらず此処で寝ているという事は、自分は十中八九酔い潰れたのだろう。
全く思い出せない記憶に眉を潜めて唸っていたが、ふとある疑惑が浮かび、今度は別の意味で更に表情を引きつらせた。
一緒にベッドで寝ているこの現状から推測されるいくつかの状況。

まさか、そこまで記憶がないなんて事は…ないよな?

とある可能性を確かめるのが怖くて、視線を彷徨わせつつ恐る恐る毛布を捲るが、軽装ではあるものの幸い自分も幼なじみの服も乱れていなくてとりあえず、安堵の溜息を吐く。
という事は、やっぱり単純に自分は珍しく酔い潰れてしまい、それを幼なじみがベッドへ運んでくれたという事で間違いないだろう。
一向に目覚めない穏やかな幼なじみの寝顔を眺めながら、悪い事したな。と小さく息を吐いた。
邪魔をした自覚はあるが、迷惑をかけるつもりはなかった。と、何時間か前の自分が犯した失態へ、心の中で舌打ちをする。
最近、各地を様々な用事で回りなかなかに多忙だった所為か、ろくに休みもせず疲れていた時にアルコールが入ったのが仇になったようだ。
失敗した。と、再度溜息を吐く。
とりあえず、水でも飲んで頭をすっきりさせようとベッドサイドへ視線を向けるが、当然都合よく水…は愚か、飲み物が置いてあるなんて事はなく。
目の前の彼の金髪を軽く撫でると、潔く起き上がる為にシーツに肘をつき上体を起こしかけた瞬間
ふと、未だ毛布の中にある左手を緩く引かれた感覚がして動きを止めた。
訝しげに視線を落とす。
シーツに埋もれている幼なじみが未だ夢の中にいる事を確認し、左手が隠されている毛布の端を持ち上げると、緩いけれどしっかりとした力で繋がれている手が視界に入った。
思わず目を見開く。
そして、目を覚ましてから今まで、違和感すら感じず全くと言っていい程に気付かなかったそれに思わず破顔した。


昔は、まるで双子のように狭い寝床で触れ合う程に顔を突き合わせて密着しながら、お互いの手を握りあって寝ていた。
暖を取る目的もあったが、それ以上に不安もあったのだろう。
今では一緒に寝る機会さえ格段に減ってしまったが、それでもたまに一緒に寝た時には、朝起きて気付いたらうっかり手を繋いでましたなんて事があったりする。
けれど、それも昔に比べればとても稀な事で。
癖が直ったのかと内心安堵した時もあったが、実はそうでもないらしく。
手を繋いで寝ている時は、今でも昔と同じようにどちらかが不安定な時だったりするから質が悪い。


一つ嘆息し、彼の髪に指を差し込みゆっくりと髪を梳くように撫でると、起こしかけた体を再び毛布へと横たえ、密着するように近づいた。
そこから更に、繋いだ手を指までしっかりと絡め合う形に繋ぎ直すと、昔のようにお互いの呼吸を感じられる位置まで近付く。
シーツに顔を埋めると、妙に安心する匂いが鼻を擽り瞳を細めた。
そのまま空いた手を彼の背中へ回す。
知らず吐息が零れた。

何故、こうも安心するのだろうか。

むしろ、これこそ癖になっているのではないかと悩んでしまう程に。
それ位、幼なじみの傍は無条件で安心出来るし居心地がいいのだ。

暫くそのまま彼の顔を至近距離で眺めていると、目の前の閉じられていた目蓋が何の前触れもなく静かに開いた。
起こしてしまったかと思いつつ、何となくそのまま黙って見ていたら、彼は何回か瞬きをした後、ゆっくりと微笑んだ。
繋がれた手に力が籠められる。
そして、空いた手で腰を引き寄せられ可能な限り近寄ると、安心したように再びその瞳を目蓋へ隠した。
多分、寝呆けていたのだろうその一連の行動に、思わず笑みを溢すと鼻先を触れ合わせ、今度はゆっくりと目蓋を下ろした。

明日は、彼より早く起きて朝食を作ってあげよう。

微睡みの中、そんな事を思いながら今度こそ意識を沈めた。


end



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フレユリは、お互いの境界線がなく双子みたいに寄り添いあってるのが理想。

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