その他

□非日常
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。『寝起き』


ED後。
もしも二人一緒に帰ってこられたとしたら。
普段なら、こういう設定で書くのは避けるのだけれど、甘々書きたかったので。
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不穏な気配を感じて閉じていた目を開けると、目の前には何故か己と瓜二つの同じ顔。
しかも、その目蓋は閉じられていて、その上徐々に近づいてくるある意味見慣れた顔に、反射的に手を持ち上げると無防備な両頬を片手で鷲掴みにし、遠ざけるようにして押し退けた。


「…ぅぶっ!」

「……何をしている?」


指が食い込む事で歪んでいる頬に更に力を入れて食い込ませると、痛いと叫んでいるのか何やら言葉になっていない声で喚きながらじたばたしだしたので、上半身を起こすついでに仕方なく手を離してやった。
ソレは依然として、寝ている己の体に馬乗りになったまま捕まれた頬を、痛かった…と涙目になりながら頻りに撫でている。
そして、何故か不満そうな眼差しを此方へ向けてくるので、起こされた苛立ちもあり、さっきと同じ台詞を殊更ゆっくりと口にした。


「何を、している?」

「何って、おはようのちゅーに決まってんだろ!!」


当たり前の事を聞くなよな!とでも言うように、腰に手を当て偉そうに胸を張るソレに、くらりと目眩を感じた。
バカだバカだと常に思ってはいたが、これほどまでとは…。
額を押さえ、目を閉じると思考を巡らせる。
情報源…というか、碌でもない事を吹き込んだのは何処のどいつだ!?と、ソレの仲間達の顔を一人一人思い浮かべながら剣呑な表情で考え込んでいると、さっきまで騒がしかった空間がいつの間にか静かになっている事に気付いた。
訝しく思って顔を上げると、またしても先程と同じように口唇を尖らせて近づく、己と同じ筈なのに何処か間抜けな顔。
今度は手加減などせずに、躊躇いもなく頭を鷲掴みにすると、容赦なく力を籠めていった。


「いだだだ!!アッシュ!頭割れるって!」

「そのまま割れてしまえ」

「ちょっ!本当に割れるって!!」


これでもそれなりに手加減しているのに、痛い痛い!とあまりに煩く大袈裟に騒ぐので、これ以上は屋敷の中を見回りしている警備の騎士達が来てしまうと仕方なく解放してやった。
ひでーよ、アッシュ!と、ぼやきながら頭を擦るそいつに最早溜息しか出ない。
何やらぶつぶつと呟くそいつの相手をするのが面倒臭くなって、逸らすように視線を向けた先の窓。
僅かに空いた隙間から見える空は、朝焼けのグラデーション。
明るくはなっているが、それでもまだ薄暗い気がするそんな色合いの空。
どちらにしても、まだ早朝だという事実に二度寝してしまいたかったが、この騒動で目が醒めてしまった上、仮に寝るとしてもこの様子では寝かせてもくれないだろうと思い、潔く諦めた。
そもそも、何でこいつはこんな早朝から人の上に乗って騒いでるんだ?と、ベッドから片足を下ろした所で問い質そうと顔を上げると、目の前には逆光で黒い障害物。
次いで口唇に触れる柔らかい感触。
思わず目を見開いて固まっていると、黒かったソレが離れ、それによってさっきの障害物が人の顔だったのだという事に気付いた。
それと同時に、口唇に触れた感触はキスをされたのだと知る。
思わず半眼になり、今度こそ喚こうが容赦なく頭を殴ってやろうと腕を振り上げた瞬間、離れたソレの浮かべた表情にぴたりと動きが止まった。


「おはよう、アッシュ」


明るい言葉とは裏腹に、今にも泣きそうに歪んでいる顔。
必至に笑顔を浮かべようとしているようだが、見事に失敗している。


『……何て顔をしているんだ、お前は…』


その表情の意味を朧気に理解した瞬間、出す筈だった言葉は意味を持たないものへと変わった。
代わりに、舌打ちがでる。
そして、色々な物を無理矢理飲み下す代わりに、目の前で俯くそいつの頭を軽く殴った。



end



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割と甘めになったと思います。
アッシュを可愛くしたかった。

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