その他

□郷愁
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※同じシチュエーションでテイルズ3作。『寝起き』

CP色薄めです。
多分、親子バレ後。

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何か、とても懐かしくて暖かいものに包まれている、そんな感覚に目が覚めた。
気持ちが良くて嬉しいのに、それと同時にとても悲しい気持ちにもなるその相反とした気持ちに、不安になってぎゅっと抱きつくが、まるで生き物のような柔らかくて温かいそれに、次第に醒めてくる頭が、あれ?と訝しげに思った。
ノイシュでも抱いて寝ただろうか?とも思ったが、それにしては毛の感触が全くしない。
では、一体自分は何に抱きついているのかと、未だ眠くて重い目蓋をゆっくりと開くが、何故か目の前は真っ暗で何も見えない。
何回か瞬きを繰り返している内に、しっかりと目が覚めてくる。
どうやら、自分が抱きついているものは、何か…ではなく人のようで
しかも、自分はその誰かに抱き抱えられていているような……?


『誰かって……誰にだ!?』


一瞬、頭が真っ白になって固まるが、確認しなくてはと決心し恐る恐る顔を上げると、そこにあった顔に反射的に上げそうになった声を、慌てて飲み込んだ。


『クラトス!?』


まさか、彼に抱きついているとは思わず驚きはしたが、それと同時に妙に納得もしていた。
あの懐かしい、けれども悲しい不思議な感覚は、きっと幼い頃を思い出したからだろう。

一度、息を吸い落ち着いた所でもう一度彼の顔を覗き込んだ。
こんなに近くでもぞもぞと動いていれば、気配に聡い彼の事だから起きるんじゃないかと危惧したが、そんな気配は全くなく
依然、静かに閉じられた目蓋は開かれる様子はない。
これ幸いと、普段恥ずかしくてまじまじと見る事が出来ない分、凝視するように彼の顔を眺める。


目の前の彼は

間違いなく自分の目標で

そして、もう二度と忘れたくない大切な存在だ。


『クラトス……父さん』


何故、自分達がこんな状態で寝ているのかは全く思い出せないので分からないが、彼を起こしてしまった事でこの体勢を離されるのは嫌だったので、そろそろと顔を戻すとぎゅっと目蓋を閉じた。
まるで、庇護するかのように囲まれた腕に、鼻の奥が痛くなってきて思わず鼻を啜ると、不意に頭に乗っていた手が髪を優しく撫でるように動いた。
起こしてしまったのかと、一瞬ぴくりと肩が動いたが、そのまま黙って寝たフリを続ける。
目頭が熱くなる。
まだ早いから寝ていろ。と、囁く声が聞こえて抱き直され、まるでぐずる子供を宥めるかのように緩いリズムで背中も叩かれる。
押しつけられた心臓の規則正しい音が懐かしくて。
でも泣きたくなって。
背中に回した腕に力をこめた。


『………で、父さん』


言葉を飲み込み、漏れそうになる声を彼の胸に顔を埋める事で押し殺し、震えそうになる体を必至に堪えながら寝たフリを続けた。




end

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一度は書いておきたいネタ。
ロイクラのつもりで書いてた筈が、いつのまにか親子になってた。

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