□スローテンポ
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※大変遅くなりました。

前HP27000HIT・まち様のリクエストでアス♀キラ甘々です。

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※キラが女の子です。
※学パロっぽい。
※15禁程度?ですが、そういう描写があるので注意。

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勝手知ったる幼なじみの住む隣家へ向かう足取りは軽い。
呼び鈴を鳴らし、対応に出てきた幼なじみの母親とにこやかに挨拶を交わしそのまま二階へ。
たどり着いた扉の前。部屋の中から物音がするのを確認してから一つ深呼吸。忘れてはいけないあれこれを頭の中で整理し、いざ部屋の中へ突入!
キラはノックもせず、ましてや部屋主の返事を聞く事もなく思い切り扉を開けた。


「おはようアスラン!」


着替えの最中だったのか、中途半端に胸元のボタンに手を掛けたままこちらをぽかんとした表情で見つめてくる幼なじみに、キラは満足気に頷いた。どうやら奇襲は成功したようだ。
いつも平日でさえ遅刻ぎりぎりまで寝ている自分が、よもや貴重な休日に朝早く起きている等とは思うまい。
キラが腰に手をあて、心の中で悪役さながらの高笑いをしていると


「おはようキラ。今日は早いんだな」


爽やかな笑顔付きで、いたって普通の反応をされた。
もっと驚いてよ!こんなに早く起きてるんだよ!?この僕が!と主張すれば、むしろ嘆くべき所じゃないか?とのつれない返事。
どうせ、いつも遅刻ギリギリですよ!すみませんねーいつもいつも起こしてもらって!と拗ねて唇を尖らせれば、アスランに苦笑いを貰った。
反論すれば、こちらの機嫌がますます拗れると思ったのかもしれない。


「それより、休日に制服着てどうしたんだ?何かあったのか?」


その言葉にキラは忘れかけていた当初の目的を思い出した。
実はキラとアスランは幼なじみでもあるが、それと同時に恋人でもあったりする。といっても、まだ付き合い始めてから半年なのだが。
そう。まだ半年だがもう半年。
何が言いたいのかというと…
単刀直入に言えば、未だにキス以上の進展がないのである。
故に、今日キラはとある作戦を実行する為にわざわざこの格好で朝早くから幼なじみの家に奇襲した訳なのだが。
もっともキスをするしないだけなら、然程難しい問題ではなかったに違いない。積極的に行動するも良し、ゆっくり待つのも良し。当人達の自覚と行動次第なのだから。
しかしキラ達の場合、それ以前に問題があった。
要するに、二人でいてもそういう雰囲気にならないのである。キスをしていても…だ。
何ていうか…言うなれば、男女ではなく家族のカテゴリーっぽい雰囲気になってしまっていて、恋人同士特有の雰囲気なんて全く欠片もないから進展どころの話ではない。それでも最初はぎこちないながらも恋人っぽい雰囲気は漂っていた。多分お互いに緊張していたせいもあるし、新たに追加された関係性に戸惑いもあったからだろう。
そこまでは良かったのだ。
問題はその時期が過ぎてしまうと、それすら慣れてしまい元の雰囲気に戻ってしまったところにある。
元々関係性の変化以外は幼なじみの頃と何ら変わらない態度と行動だったので、気付けば幼なじみに恋人も兼ねている…的な。そんな微妙な位置に意図せず落ち着いてしまっていた。
今だから言えるが、誤算だった。
しかし、必然でもあったのかもしれない。
かくいうキラ自身も、そういう雰囲気もそれはそれで居心地いい…と思って今まであえて見ないふりをしていたから。こればかりは、一概にアスランだけを責められない。
しかし、キラとアスランは恋人。何だかんだで悩みに悩んだ結果、足踏み状態の現状を打破しようと決意したのである。
例え、幼なじみが進化した関係であっても恋人は恋人。少しは世間と同じように恋人らしいこともしてみたい…と、半年を経過して漸く思い始めたのもある。随分と遅い自覚だったが。
…と、いうのを親友に愚痴混じりに話をしたら微妙な視線を向けられたが色々とアドバイスをくれたので、せっかくだからと実践しにきた訳である。
しかしキラもそうだがアスランも、恋人になったからと言ってすぐに意識しだして関係性を切り変えたようには見えなかったので、多分今でもキラに関しては彼女10割ではなく、むしろ5割りの残り5割は妹だと思っているのではないかと思っている。
だから、容易ではないのは予想の範囲内だ。かと言って、気付いてしまったからには何もしないという訳にはいかない。
これはキラの意思で願望だ。
幼なじみの居心地の良さも知っているが、せっかく叶った恋なのだから恋人になりたい。
だったらやることは一つ。
何がなんでもそういう雰囲気を作るしかない。
そういう訳で、今日は親友曰く別視点からのアプローチ?をして様子をみようと思った訳だ。夏服披露したいのも本当だけど。
キラは再度腰に手を宛て胸を反らせた。


「夏の制服を一足先にお披露目に来たんだ」


こちらに注意を引き付け制服に向けられた視線を確認して一つターンを披露。短めのスカートがふわりと舞い上がり太股を見せる。中身まで見せないのがコツだと教わったので、回る速度に注意をしつつまた一回転。


「どうかな?」


回転終わりに駄目押しのように首を傾げれば、恋人でもあり幼なじみでもある男の口から聞こえたのは、夏服は初めて見るな。と平凡なコメント。
うん。君のそういうところも好きだけど今は苛つく要素でしかないよね。
予想通りの反応にキラは半眼になった。


「……それだけ?」

「?…あぁ、スカート丈…規則ではそんなに短かったか?」


注目すべきはそこだけどそこじゃないんだよ!

キラは思わず地団駄を踏みそうになるが、ぐっと我慢。
とりあえず冷静になる為に一度深呼吸。ある意味予想通りだったから問題ない。親友にも散々言われた。大事なのは根気だと。
再び着替え始めたアスランを横目に、キラは部屋へと入った。
もう散々騒いだ後で遅い気もするが、早朝に他人の家の廊下で煩くするのはいただけない。とりあえず扉を閉めて勝手知ったる幼なじみのベッドへと腰をおろした。
改めて部屋の中を見渡す。何ていうか、片付いてる空間と散らかってる空間の差がすごいといつもながら感心。散らかってる空間というのは、また何やら作っていたのか設計図もろともごちゃごちゃに放置してある空間の事だ。それ以外の場所は逆に少なすぎるのではというくらいモノがない。
いつも思う事だけど、自分の部屋とは正反対だなぁ。なんて思いながらキラは浮いた足をぶらつかせ、着替えてるアスランの姿を背後から眺めた。
やはり小さい頃から通い慣れているせいか、幼なじみの部屋は落ち着く。その居心地の良さに思わず欠伸が漏れた。
…って、くつろいでる場合ではない。何のためにきたんだ。
当初の目的を見失いかけていたキラは慌てて次の行程を思い出していた。
えーと、確か……。ちょっと誘導が強引な気もするが仕方ない。
キラは小さく気合いを入れ直した。


「ねぇ、アスラン」

「ん?」

「…何か、暑いよね」

「空調下げるか?」


こちらを伺う素振りを見せつつも返事を聞くこともなく、アスランはベルトから手を離すと傍らにあったリモコン操作で温度を下げた。
緊張のためか火照った肌に当たる涼しい風が気持ちいい…でもなくて!
気が利くようである意味空気の読めない幼なじみに、キラは理不尽な怒りをもった。
いつもなら何とも思わないその気遣いが、今日に限っては不都合なことばかりで。
このままだと作戦に支障が出かねないと焦ったキラは強行突破することを決意した。素早くネクタイを解いてボタンを外し、ささやかな胸の谷間を強調させる。背後でごそごそしている気配を感じたのか振り向いたアスランの視線に気付かないふりをしつつ黙々と準備を整える。
さぁ、どうだ。






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