□スローテンポ
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「ちょっ!アスラ……んんんっ!?」


掴まれたままの肩を押され、唇を塞がれる。後頭部がシーツへと沈み状況の恥ずかしさから目を閉じれば、今度は宥めるように目蓋にも唇が触れた。頬、鼻先と続き引き結んだ唇へ再び戻ってくる。繰り返されるキスというよりは皮膚を擦り付けるような仕草に、最初は強張っていたキラの体からだんだんと力が抜けてきた。抵抗のためアスランの胸を押していた手からも力が抜けたところで、唐突に舌を差し込まれる。


「っ!?んんぅっ!」


口腔に忍び込んできたぬめる舌に意識が向いている間に肩を掴んでいたアスランの手はいつのまにか首筋を辿りはじめ、緩めてあった襟元へと着くと鎖骨を擽るように指先が踊る。そのまま胸元へと手が下がり膨らんだそこを布ごしに軽く揉まれた瞬間、刺激に体がぴくりと跳ねた。


「落ち着いて、キラ…」


文句を封じ込めるように再び塞がれた唇が震える。焦れったいほどゆっくりと膨らみかけの胸を揉まれ、身を捩らせた。
アスランの手が動く度にその刺激から逃れるかのようにシーツへと後頭部を擦り付ける。熱を帯びた吐息が首筋を擽り次いで感じた小さな痛みに、痕をつけられたことをぼんやりとした頭で自覚していた。
不自然に震える吐息。籠もる熱をどうにかして欲しくて、縋るようにアスランの首へと腕を回す。もう片方の手が太股へと触れた所で我に返ったキラは、慌てて緩んでいた足を閉じるのと同じに自らの手を下肢へと伸ばし侵入を遮った。


「キラ、大丈夫だから…」

「…でもっ、恥ずかし…っ」


股関節に近い際どい処をゆっくりと何度も撫でられ無意識に強ばる体。そこから意識を逸らすように胸を揉まれる。その動きに力が緩み阻んでいた手が縋るようにアスランの肩へと伸ばされた隙に、再び手が隙間から下肢へと差し込まれた。下着越しに触れる手の感触にびっくりして固まっていると、いつのまにかはだけていた制服の下から潜り込んだもう片方の手もまた直接肌を滑りだす。混乱したキラの瞳が本格的に潤み始めた。


「う…、ぁっや…っ!」


敏感な部分をゆるゆると指を這わせるように辿られ、意図せずにびくびくと腰が跳ねた。シーツをきつく握りしめ羞恥と混乱から思わず目を閉じ顔も逸らせば、涙の跡を追うようにキスが落とされる。分散される意識に涙が止まらない。籠もるばかりの熱に翻弄されていると、不意に肌の上を動く手が止まった。
目蓋を持ち上げれば、目の前には欲情したようなアスランの顔。初めて見るその表情に状況を一瞬忘れたキラは頬を染めた。


「…ぁ…すらん?」

「ごめん…、止まらない」


罪悪感からか表情を歪めつつも、下着の中へと差し込まれた指先が再び動き始めた。首筋を熱い舌が這い、ばくばくと煩い心臓の上の肌にアスランの唇が直接触れる。


「大丈夫…、もう少し…」


何が大丈夫!?
何がもう少し!?

そう思うが、実際にキラの口から出てくるのは意味のなさない言葉の羅列ばかり。とうとう下肢の秘所に指先が埋まりかけたところで、タイミングよく階下からアスランを呼ぶ母親の声が聞こえた。
瞬間、びくりとお互い動きが止まる。まるで今まで止まっていた刻が急に動き出したかのように、それまで聞こえていなかった雑音が大量に耳へと蘇ってきた。
鳥の囀りに生活音。部屋へと差し込む朝日の眩しさに暫し視線が彷徨った。
お互い無言のまま、そのままの体勢で息すらも潜め階下の様子を伺っていると、一旦は遠ざかった声が今度はキラの名前を呼んだ。震える声で辛うじて返事を返し二人同時にため息を吐く。


「…まだ朝だったんだよな」

「…僕のほうこそ、ごめん」


お互い視線を逸らしたままぽつりと零れた声に、何処かぼんやりとしたままキラは返事を返した。未だ煩い心臓を宥めるように手を当てれば、そこが素肌なことに気付き慌ててたくしあげられていた制服の裾を下げる。
額に手を当て再度ため息を吐いたアスランがゆっくりとキラの上から退いた。ベッドから降りる恋人の姿を複雑な気持ちで見送れば、バツが悪そうに顔を背けたアスランが乱れたキラの服装を整え始める。


「……先に行っててくれないか?」

「う…うん」


何故なのか聞いたらいけない雰囲気を感じて、キラはぎくしゃくしながらもベッドから立ち上がると最低限の身だしなみを整え、そのまま振り返らず部屋を出た。静かに後ろ手に扉を閉めるとそのまま寄りかかる。何だか下着が少し湿っていて気持ち悪いが仕方ない。物音一つ聞こえない背後の部屋にいる恋人を思いながら、キラは重いため息をついた。
自分から仕掛けたこととはいえ、何だかとんでもないことになってしまった気がする。
果たして、この続きをする日は近いのか遠いのか。
……本当は
あのまま流されてもいいかな…なんて一瞬でも思ってしまったなんて、今はまだアスランには言わないほうがいいだろう。とキラは思わず天井を仰いだ。
当初の目的は達成出来なかったが、本当の意味で心の準備が出来ていなかったのだと知ることが出来たし、思いがけずアスランの気持ちも聞けたので後悔はしていない。
階下からかけられた三度目の朝食の誘いに、紅潮したままの頬とアスランが遅い言い訳を考えつつキラは階段を降りていった。








end








+++++++++

女体化は書いててすごく楽しかったけど、いざそのシーンを書くとなると想像以上に恥ずかしかった。
これが限界のようです。


改めまして
完成が遅くなってしまい、本当にすみませんでした。
そして、リクエストありがとうございました。
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